伊6潜サラトガ雷撃す―海底十一万浬 (学研M文庫)



伊6潜サラトガ雷撃す―海底十一万浬 (学研M文庫)
伊6潜サラトガ雷撃す―海底十一万浬 (学研M文庫)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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歴戦の艦長が綴る非常に貴重な一冊

卓越した、いや類まれなる文章表現の才能を持った御仁です。作戦航海中の凄まじい緊張感に包まれた潜水艦内の様子、部下たちの、そして艦長自身の心の機微を繊細に表現し綴られており、読者の脳裏にはまるで映画のシーンが描写されているかのように容易にイメージできるほど。まさに釘付け。誰もが、先を知りたくて読むのを止められず、一気に読破することでしょう。なんとも素晴らしい作品である。

潜水艦とは、いかに盲目であり、脆弱であり、孤独であり、不潔であり、過酷であるか・・・身に沁みます。この限られた空間に配された人員は誰もが重要な配置任務を帯びており、艦全体の命運を握っています。無論、水上艦艇のような余剰人員を乗艦される事も出来ませんので、個々へかかる責任と重圧は並み大抵ではない。ミスは絶対に許されないのだ。

数ある艦艇の中でも潜水艦ほど艦長の性格や特徴が現れるものは無いのではないだろうか。それだけに部下の信頼を獲得し、掌握する人徳を持つことは、艦長にとって戦闘を戦い抜く上での必須の条件であった事と思う。本書には稲葉艦長の失敗を認めて反省し、それを執筆して公開する正直な姿勢、手柄を皆で共有するといった心境が随所に見られ、その高い人徳を窺い知ることが出来る。部下には積極的に相談し意見を求め、皆が納得した状態で任務を遂行する「人の上に立ち、人を動かす者」としての操艦術を大いに学ぶことが出来ました。本書は各章ごとに内容がガラリと変わって、小気味良いのも読者を飽きさせない秘密だと思います。数ある戦記の中でも五指に入る一冊。潜水艦での生活、構造、用語、命令系統、そこで働く人間模様など非常に勉強になりました。読み応え十分!読まないと後悔する超オススメの潜水艦戦記です。
一気に読んでしまった

面白かった。潜水艦という、比較的地味な兵種の本でありながら読み応えは十分。一気に読んでしまった。太平洋戦争において、日本の潜水艦は「日米の主力艦隊が決戦する前に接敵を行い、同時に漸減を強いる」という役割を受け持っていた。しかし歴史を知る我々からすると、通商破壊で大きな成果をもたらした米国の潜水艦隊にくらべ、日本の潜水艦隊はあまり大きな戦果を達成することはできなかった。これはなぜなのだろうか?

この本は一人の潜水艦艦長の回顧であり、このような疑問に答えてくれる。著者自身は、自身の経験から従来の索敵・漸減作戦は非効率であることを知っており、主張もしている。しかし連合艦隊・大本営はそのような意見を取り入れず、かえって潜水艦に最も不適切な任務を強いる。それはガダルカナル、ニューギニア、アッツなどへの輸送任務だ。局地的には、ガダルカナルの陸軍への輸送は必要だ。しかしもっと大局的に見るならば、制空権も確保できないところに手を広げすぎた中央にも問題があるはずだ。また同盟国であるドイツは、大西洋での海上封鎖を有効に進めるため、太平洋での通商破壊を日本に要請してくる。太平洋で日本軍がそのような作戦を進めれば、大西洋に派遣している護衛艦隊を回さざるを得ないからだ。著者もそのような作戦にこそ潜水艦が力を発揮すると考えているものの、中央には潜水艦のプロフェッショナルは一人も一人なかったのだ!よってこのような適切な意見が採用されることはなく、日本軍は相も変わらず局所的な要求のみに目がくらみ、大局的判断を誤ってしまうのである。

またこの本は、一人の潜水艦艦長が、部下の統帥に非常に気を使っているさまがよく描かれている。そのテクニックや考え方には、参考になるものが多い。著者は開戦から終戦まで生き延びたことで自分をラッキーであると言っているが、ひょっとすると統帥面にまで細かく気を配ったことも一助になっているのではないかと思う。そういう統帥上のことも参考になるが、内容だけをとってもとても面白い本だった。



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